シリーズ・衣鉢を継ぐ伝統芸能者たち 9/11　第三回　「芝居噺の魅力」

　日本の伝統芸能の世界は、どのジャンルでも先人や師匠からその道の奥義を教えられた者たちが次の世代にその真髄を伝えることで長らく続いてきました。シリーズ＜衣鉢を継ぐ伝統芸能者たち＞では、それぞれのジャンルで陰に陽に支えている伝統芸能者たちに着目し、先人や師から受け継いだこと、次世代に伝えていくことなどをお伺いします。
　第三回目のゲストは、東西の噺家の古今亭菊之丞師匠と桂吉坊師匠をお招きいたします。
　菊之丞師匠は、二代目古今亭圓菊師に入門し、古今亭一門で活躍しながら、現在は落語協会の理事も務めていらっしゃいます。吉坊師は、桂吉朝師に入門し、大師匠の桂米朝師のもとでの内弟子を経て、現在は上方落語界の期待のホープです。
　お二人の共通点は、落語と深い繋がりがある文楽や歌舞伎といった芝居好きなところ。そこで、お二人それぞれに「芝居噺」をご口演いただきます。「芝居噺」とは、浄瑠璃や歌舞伎の作品が題材の落語で、たとえば『仮名手本忠臣蔵』に関わる「七段目」や「淀五郎」などの演題があります。今回は、贅沢にも東西の師匠による「芝居噺」の聴き比べ、また、合間のトークセッションでは、両師匠から古今東西の落語界の共通点と差異などをお話しいただきます。落語を軸に、文楽や歌舞伎の世界とも交わりながら古典芸能の奥深い魅力を紐解きます。
　聞き手・進行は、歌舞伎・文芸の世界に造詣が深い三重大学人文学部の田中綾乃准教授です。

※菊之丞、吉坊両師匠の演題は当日のお楽しみです。

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古今亭菊之丞（ここんてい・きくのじょう）
　1972年東京都渋谷区生まれ、91年、古今亭圓菊に入門。前座名「菊之丞」。94年二ツ目昇進。2002年NHK新人演芸大賞落語部門大賞。03年真打昇進。08年、09年、11 年に国立演芸場花形演芸大賞金賞、13年、文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞、17年、芸術祭
賞優秀賞。 20年、一般社団法人落語協会理事就任。
趣味はカラオケ（懐メロ）、芝居鑑賞、日本舞踊（坂東流）。出囃子は「元禄花見踊り」。

桂吉坊（かつら・きちぼう）
　1981年兵庫県西宮市生まれ。99年、桂吉朝に入門。2000年から桂米朝のもとで内弟子修業。03年、内弟子卒業、以後、古典落語を中心に舞台を重ねる。19年、国立演芸場花形演芸大賞金賞、23年大阪文化祭賞奨励賞、同年繁盛亭大賞。
自身の会である「吉坊ノ会」を東京・大阪で開催するほか落語会を各地で行う。雅楽や日本舞踊・能などへの造詣も深く、ナビゲーター・対談なども数多く勤める。出囃子は「南地小唄」。

田中綾乃（たなか・あやの）
　名古屋市生まれ。三重大学人文学部准教授。演劇評論家。カントを中心とする哲学研究を行う一方、長年の観劇歴から演劇批評にも携わる。歌舞伎公演パンフレットの演目解説や新聞評、雑誌などでの劇評執筆多数。